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公正証書遺言は自筆証書遺言に比べて作るための費用が高いと聞きました。高いお金をかけてまで作る必要があるのでしょうか?

柏市の相続司法書士 永田

自分で遺言書を作っても、法的に無効になっては意味がありません。費用が掛かりますが安全性が高いとされている公正証書遺言を作成することをお勧めします。

代表的な遺言書として「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」がありますが、公正証書遺言のメリットとデメリットを見てみましょう。(文責 柏市の相続司法書士 永田淳一)

公正証書遺言のメリット

  1. 相続人間で争いになったときに有効となる可能性が高い
  2. 自分で文章を書かなくてもいい
  3. 形式無効とされることがない
  4. 相続手続をする場面で使いやすい
  5. 紛失しても再作成が簡単
  6. 改ざんの可能性がない

①相続人間で争いになったときに有効となる可能性が高い

相続争いが起きた場合、よく言われる主張の一つとして「遺言書を作った時点では、父親は認知症になっていて遺言書を作れなかったはずだから無効だ。」という主張です。遺言書を作成するのは高齢者の場合が多く、遺言者の認知機能が問題となることがよくあります。認知機能の境界線は曖昧なケースが多く、「絶対に大丈夫/判断能力がない」と断定できないため上記のような主張が出ます。自筆証書遺言の場合には、遺言者が一人で作成するので手軽ですが、作成時に判断能力があったかどうかを証明してくれる人がいません。

これに対して公正証書遺言の場合には公証人が立ち会いますので、遺言者の認知機能に問題があると判断された場合には公証人は遺言書を作ってくれません。遺言書を作成した時点では認知機能に問題はなかったという証明になるので、自筆証書遺言に比べるとかなり高い安全性があります。

※なお、公正証書遺言であっても、遺言者の認知機能について争いが生じる可能性はゼロではありません。しかし、自筆証書遺言に比べると安全性は非常に高いものとされています。

➁自分で文章を書かなくてもいい

自筆証書遺言は基本的に全て自書する必要があります。全文をパソコンで作成し、最後にサインをするという形式では無効となるので、体力が落ち、視力が弱い高齢者には高いハードルとなっています。(なお、財産目録についてはパソコンで作成することも可能となりました)文章を読み上げたものを動画に撮影する方法も考えられますが、残念ながら動画自体は法律上の遺言とはなりません。

これに対して、公正証書遺言の場合には公証人がパソコンで文章を作成してくれますので全文を自書する必要はありません。文末に署名と実印の押印をするだけなのでとても簡単です。私の経験としても、自筆で遺言書を書くことはできないほど持病の状態が悪い方から遺言作成のご依頼があったのですが、このような場合にも公正証書遺言はとても便利な制度です。

③形式無効とされることがない

遺言書が有効に成立するためには非常に厳格な形式的要件があります。

これに対して公正証書遺言の場合には公証人が立ち会いますので、遺言者の認知機能に問題があると判断された場合には公証人は遺言書を作ってくれません。遺言書を作成した時点では認知機能に問題はなかったという証明になるので、自筆証書遺言に比べるとかなり高い安全性があります。

これに対して公正証書遺言の場合には公証人が立ち会いますので、遺言者の認知機能に問題があると判断された場合には公証人は遺言書を作ってくれません。遺言書を作成した時点では認知機能に問題はなかったという証明になるので、自筆証書遺言に比べるとかなり高い安全性があります。

自筆証書遺言の場合、形式的要件が1つでも欠けると無効になり、どんなに内容が良くても法律上の効力は発生しません。特に文字の書き間違いを訂正する方法に注意が必要です。

これに対して、公正証書遺言の場合には公証人が作成する文書なので、それだけで形式的要件を全て満たしたものとして扱われます。

④相続手続をする場面で使いやすい

遺言書を作成しても、実際に銀行口座や不動産の名義変更などに使用できなければ意味がありません。

自筆証書遺言の場合、名義変更のために遺言書を使うには家庭裁判所で「検認」という手続が必要になります。検認手続をするには相続人がわかる戸籍を収集し、さらに相続人全員の住所を調査して裁判所に提出する必要があります。その後、裁判所から相続人全員に連絡が行き、期日に相続人が裁判所に集まることで検認手続がされます。この検認が終わらなければ銀行や法務局では遺言書を受け付けてもらえないため、とても時間がかかります。

これに対して、公正証書遺言の場合には上記の検認手続は必要がありません。相続人全員への連絡も不要ですし、相続人が集まる期日もありません。名義変更手続きをするための準備が非常に少なくなります。

⑤紛失しても再作成が簡単

遺言書は紙ですので、火事での焼失や引っ越しで紛失する可能性があります。

自筆証書遺言の場合、自筆の書面というのは世界に1つだけですので遺言書を失くしたら再度作り直すしかありません。大事なものだからと厳重に保管した結果、かえって遺言者の死後に見つけられないというケースもあるようです。再作成の際にも自筆で作成する必要があるので非常に労力がかかります。

これに対して公正証書遺言の場合には、原本は公証役場に保管されていますので、公証人に依頼をすれば再発行をしてもらえます。さらに、平成26年以降に作成された公正証書遺言はデータ化して全国の公証役場で管理されているため、万が一その公証役場が火事になっても再度作成してもらうことが可能です。

⑥改ざんの可能性がない

「本当に遺言者本人が書いたのか、誰かが改ざんしているのではないか」という主張も相続争いの場合には多くなされています。

自筆証書遺言の場合、本当に本人が書いたという証明は非常に難しいです。遺言書の発見者が勝手に書き足してしまう可能性は否定できません。例え本人が書いたものでも、年月を経て筆跡が変わることもありますので、遺言者のものであるかの証明が難しくなります。遺言書の効力が発生するのは遺言者死後ですので、遺言者本人に確認をすることもできません。

これに対して公正証書遺言の場合には、公証人が証明をしていますので疑念を持たれることはありません。また、遺言内容の変更には、その旨の遺言書を作成する必要がありますが、公正証書遺言を使用すれば遺言者の意思で変更をしたことが証明されます。

※令和2年7月から自筆証書遺言を利用しやすくするために「遺言書保管制度」が始まりました。この制度は自筆証書遺言を法務局で保管してもらえるもので、上記の検認手続も不要になります。しかし、この制度を使ったとしても公正証書遺言と異なり自分で全文を自筆する点は変わりません。また、遺言書の内容や遺言者が認知症であるか等について法務局での確認はありません。やはり、自筆証書遺言よりも大きなメリットがあるので公正証書遺言をお勧め致します。

公正証書遺言のデメリット

  1. 費用がかかる
  2. 遺言書作成までに時間がかかる
  3. 内容を遺言者以外の人に知られる

➀費用がかかる

 公正証書遺言を作成するためには公証人に手数料を支払う必要があります。自筆証書遺言は自分だけで作成で
きるのに比べると費用がかかります。これは専門家に依頼する以上、必要なコストですね。

➁遺言書作成までに時間がかかる 

自筆証書遺言は自分で作成するので、作りたい時にすぐ作ることができます。

これに対して公正証書遺言は公証役場の予約を取り、公証人と内容の打ち合わせをする必要があるので即日作成することはできません。しかし、よほど緊急でない限り遺言書は慎重に作成した方が良いので、時間をかけて準備をすることはそれほどデメリットではないものと考えます。

③内容を遺言者以外の人に知られる

自筆証書遺言は遺言者が一人で作成できますので、遺言者以外の人に内容を隠すことも可能です。

これに対して、公正証書遺言の作成時には公証人や証人が立ち会いますので、絶対に他の人に秘密にすることはできません。しかし、打ち合わせでは内容を精査され、間違いがあれば指摘をしてもらうことができます。絶対に内容を知られたくないという場合でなければ、公証人に知られるということはデメリットではないものと考えられます。