依頼者

遺言を作った方がいいとよく言われているけど、特にどのような人が作るべきなのでしょうか?

代表司法書士 永田

基本的には皆さん遺言書を作るべきですが、その中でも特に必要な方がいますのでご紹介致します。

相続手続きをする際、実務的には

  • 遺言書がある」・・・遺言書に沿って手続きを行う 
  • 「遺言書がない」・・・遺産分割協議(相続人の話し合い)をして手続きを進める

のどちらかになります。

詳しくはこちら(相続手続きの進め方のページにリンク)

遺言書はご自身の財産をどのような形で遺すかをまとめた書類ですので、基本的にはどんな方でも作ったほうがいいのですが、遺産分割協議がまとまらないことが予想される方の場合には、特に事前に遺言書を作ることをお勧めしています。

遺言書がないことで相続人がとても困るケースが多いためです。

遺産分割協議がまとまらないケース

  1. 家族・親族の仲が悪い
  2. 相続人に行方不明者の方がいる
  3. 相続人に認知症の方がいる
  4. 相続人に海外在住の方がいる
  5. 相続人の数が多い
  6. 独身・身寄りのない方
  7. 配偶者はいるが、子供がいない方
  8. 離婚歴があり、前の配偶者との間に子供がいる
  9. 会社を経営している
  10. 相続人以外に財産を渡したい

➀家族・親族の仲が悪い

普段から仲が良くない家族の場合、遺産分割協議の折り合いがつかないことも考えられます。相続の話し合いはデリケートなので、ちょっとしたボタンの掛け違いでも大きな争いに発展しまうこともあるのです。 また、「長年のわだかまりのせいで話し合いが進まない」「子供とは仲が良いが、その配偶者が口出ししてくる」といったご相談もよく受けますので、争族の中でも最もイメージしやすいと思います。

➁相続人に行方不明者がいる

遺産分割協議は相続人「全員」で行う必要がありますが、連絡がつかない行方不明者がいると、全員の合意をとることが難しくなります。このような場合、「不在者財産管理人」を行方不明者の代理として遺産分割協議をします。しかし、不者財産管理人は家庭裁判所への申し立てが必要で手続きが複雑になります。また、不在者財産管理人が遺産分割に参加する場合、行方不明者に不利となる協議をしてはならないとされていますので、協議内容にも制限がかかります。

③相続人に認知症の方がいる

遺産分割協議を行うためには協議内容をしっかりと理解した上での合意が必要になるのですが、判断能力に問題のある高度な認知症の方の場合、協議内容をしっかりと理解することができないことがあります。そういった方がいらっしゃる場合には、例え遺産分割協議書に署名・実印があっても遺産分割協議は法律上成立していないことになります。

なお、認知症と言っても個人差があるため、「絶対に無効」「絶対に有効」ということは言い切れませんので慎重な対応が必要となります。

④相続人に海外在住の方がいる

登記申請や銀行口座の解約をするためには、遺産分割協議書と併せて「相続人全員の印鑑証明書」も提出をする必要があります。しかし、海外在住で住民票が日本に無い場合、日本国内で印鑑証明書を取得することができません。このような場合には在外公館などで印鑑証明書に代わる証明書として署名証明書(サイン証明書)を取得する必要があります。

印鑑証明書よりも取得に手間がかかりますので、署名証明書なしで手続きができるよう、遺言書の作成をお勧め致します。

⑤相続人の数が多い

人数が多いほど相続に対する考え方も多様になるため、話し合いはまとまりにくくなります。「私はもう実家から独立しているから財産はいらない」という相続人から「物入りの時期なので、相続でもらえるものはもらいたい」という相続人まで、色々な立場の方がいらっしゃいます。また、下の世代になると面識のない親族もいるのではないでしょうか。特に数次相続の場合、そもそも自分が相続人であることを知らない人もいらっしゃいます。 そのような関係では話し合いをすること自体が難しいこともありますので、遺産分割協議なしで相続手続きをすすめることができるよう遺言書を作成しましょう。

※数次相続についてはこちらをご覧ください(数次相続へリンク)

⑥独身・身寄りがない

独身・身寄りのない方が遺言書を作成していない場合、その方の死後、家庭裁判所に選任された「相続財産管理人」が相続人の有無を確定させます。相続財産管理人が相続人の有無を調査し、相続人がいないことが確定した場合、「特別縁故者」がいればその方に財産の全部または一部が与えられますが、特別縁故者もいない場合、財産は国庫に帰属となります。もし独身・身寄りのない方が財産を誰かに渡したい場合は遺言書を作成する必要があります。

⑦配偶者はいるが子どもがいない

子どもがいない場合、相続人は配偶者と第2順位(被相続人の親)もしくは第3順位(被相続人の兄弟姉妹)となります。年を重ねると親族関係は疎遠になってくるので、話し合いがまとまりにくくなる傾向にあります。また、被相続人が寿命で亡くなる際にはその親や兄弟姉妹も高齢になっていることが多いため、認知症の方がいる可能性も高くなり、こうなってくるとやはり遺産分割協議の作成が難しくなってしまいます。

相続人が誰になるかについてはこちら(相続人のページにリンク)

⑧離婚歴があり、前の配偶者との間に子どもがいる

以下の例の場合、相続人は「現在の配偶者+現在の配偶者との間の子ども+前配偶者との間の子ども」となります。

離婚をすると、「現在の配偶者+現在の配偶者との間の子ども」と「前配偶者との間の子ども」は対立関係になってしまうことが多く、遺産分割協議の成立が難しくなります。それぞれの家族が遺産分割協議をせずに相続登記などができるよう、遺言書の作成をお勧め致します。

⑨会社を経営している

会社を経営している場合には自社の株式も相続財産になります。会社経営上は株式を後継者へ引き継がせたいところですが、遺産分割協議に委ねると後継者が株式を全て取得することが困難になる可能性があります。ですが、遺言書で株式を相続する人を決めておけばスムーズに次世代へ経営を引き継ぐことができます。 なお、株式が高額になっている場合には相続の資産バランスが悪くなることがありますので、現金や保険などで他の相続人へ配慮した遺言書にしましょう。

⑩相続人以外に渡したい

「自分の死後は財産を団体へ寄付したり、お世話になった人に渡したい」と考える方もいらっしゃいますが、遺言書を作成していない場合、財産は「相続人のみ」にしか渡せません。相続人以外に財産を渡すためには遺言書が必要になります。 なお、不動産や動産の寄付は受け付けていない団体も多いので、寄付の方法は事前にその団体へ確認をしておきましょう。