依頼者

相続手続をするために銀行や役所など戸籍を何か所も提出しないといけないのでしょうか?

代表司法書士 永田

はい。相続手続をするためには相続関係を確認する必要がありますので、銀行や役所ごとに毎回戸籍を提出することが求められています。

依頼者

提出する戸籍が10通以上あって毎回提出するのが大変なのですが、どうにかならないでしょうか?

代表司法書士 永田

戸籍の束に代わるものとして【法定相続情報証明制度】が新しく始まりました。この制度により「法定相続情報一覧図」という書類の交付を受けられます。家系図形式になっていて相続関係が一目でわかる公的な書類ですので、戸籍の束を提出するのに比べて随分楽になりますよ。

法定相続情報証明制度とは?

平成29年5月29日から「法定相続情報証明制度」が始まりました。この制度は、相続手続に必要となる戸籍の束を<法定相続情報一覧図>という法務局が認証をした家系図の様な書類へまとめることができる制度です。これを利用することで、金融機関や法務局などへの戸籍提出の手間を簡素化できます。

本来、相続手続をするには相続関係がわかる戸籍を全て提出する必要があります。銀行や法務局は提出された戸籍を共有するシステムにはなっていませんので、手続きをする場所ごとに提出をしなければなりません。取得する戸籍は通常10通程度、相続人が多い場合30通以になることもあります。銀行で戸籍の束を提出した場合、正しい戸籍かどうかを1通ずつチェックするため、確認が終わるまでに1時間以上待たされることもあります。

しかし法定相続情報一覧図は以下の通り家系図のようになっているため相続関係は一目瞭然です。特に兄弟姉妹の相続や戸籍の提出先が複数ある方など、戸籍の提出が煩雑な方の場合には相続手続が非常に楽になるのでオススメです。
実務的に、銀行に戸籍の束を提出したところ、担当者から「法定相続情報を作ってもらえると嬉しいんですけど」と言われたこともあります。

法定相続情報一覧図の形式

法務省から出ている見本です
chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001331397.pdf

被相続人の相続関係を一覧にした家系図のような形式ですね。

上記の見本の下部を見ていただくと、「登記官 〇〇〇〇 職印」となっている通り、相続関係について法務局で確認、認証がされています。

法定相続情報証明制度の注意点

非常に便利な法定相続情報証明制度ですが、戸籍や住民票と違い法務局の窓口に行けばその場ですぐに発行をしてもらえるというものではないことにご注意ください。先ほどの家系図の様なものは申出人が作成をして法務局に提出をしなければなりません。

ご自身で作成や申出をするのが大変な方は当事務所が代わってお手続きをできますので、お気軽にご依頼ください。

【法定相続情報依頼のページ】

※法務局にこの制度を申し出ることができる人は、被相続人の相続人のみとなっています。また、被相続人や相続人が日本国籍を有しないなど、戸籍を提出することができない場合にはこの制度を利用することができないとされています。

~法定相続情報一覧図取得の流れ~

①戸籍謄本等を収集

相続関係を法務局に確認をしてもらうため、まずは戸籍関係書類一式を取り寄せる必要があります。法定相続情報一覧図を使用するといっても、戸籍を集めることは省略できませんのでご注意ください。

必要な書類

  • 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍
  • 被相続人の住民票の除票
  • 相続人の戸籍
  • 申出人(相続人の代表となって、手続きを進める方)の氏名・住所が確認できる公的書類。例:住民票。運転免許証やマイナンバーカード(表裏面をコピーし、原本と相違がない旨と申出人の記名をする)

場合によって必要な書類

  • 相続人全員の住民票(法定相続情報一覧図に相続人の住所を記載する場合)
  • ①委任状 ②申出人と代理人の親族関係がわかる戸籍(委任された代理人が手続きをする場合)
  • ・被相続人の戸籍の附票(被相続人の住民票の除票が取得できない場合)

※被相続人の兄弟姉妹が法定相続人となる時など、相続関係が複雑になる場合にはさらに追加で戸籍が必要となることもあります。

参考:法務省パンフレット

②法定相続情報一覧図の作成

取得をした戸籍を元にして相続関係の図を作成しましょう。提出をした書類をベースに法定相続情報一覧図が発行されますので、過不足がないようにする必要があります。

 なお、この法定相続情報一覧図には相続人の住所を記載することも可能とされています。 法務省からもひな形が提供されています。【法務局HP:主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例

法定相続情報一覧図作成の際には一定のルールがあります。そこから外れていると修正をするように指示がありますので注意しましょう。

③申出書を記載し、戸籍と法定相続情報一覧図を法務局へ提出

収集した戸籍と作成をした法定相続情報一覧図を添えて法務局へ申出書を提出します。

提出できる法務局は

  1. 被相続人の本籍地(死亡時の本籍を指します。)
  2. 被相続人の最後の住所地
  3. 申出人の住所地
  4. 被相続人名義の不動産の所在地

のいずれかを選ぶことができます。

提出方法 法務局へ直接行くだけでなく、遠方の場合には郵送によって行うことも可能です。

④法務局の審査

内容に不備がなければ書類の提出から約1~2週間程度で法定相続情報一覧図を交付が交付されます。ただし、法務局の混雑具合により必要となる期間はかなり変わりますので、提出をする際に職員にいつ頃終わるのか確認してみましょう

法定相続情報一覧図は交付手数料無料複数枚取得可能です。提出先の数に応じて取得してください。

法定相続情報一覧図提出の際の注意点

※私の体験も含まれた記事です。全ての法務局で共通しているわけではありませんので詳しくは各法務局へお問い合わせください。

  • 被相続人の戸籍は出生まで全て必要

相続登記の場合は被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍が必要とされていますが、実際は出生まで遡らなくても手続きできる場合があります。被相続人の子どもの有無を調べ、相続人を確定させるために戸籍を使用するので、子どもがいないことが明確な年齢(12、3歳頃)までの戸籍があれば相続登記の添付書類として十分とされています。

しかし、法定相続情報一覧図を作成する場合はそれでは足りず、出生からの戸籍が要求されます。公的な書類を作成するための資料ですので、戸籍は厳密に収集しなければならないのですね。

  • 相続放棄や遺産分割協議の結果は記載されない

上記の通り、法務局に提出する書類は戸籍や住民票です。法務局はこれらに記載されている事項しか審査しません。そして相続放棄申述受理証明書や遺産分割協議書は提出ができません。つまり、相続放棄や遺産分割協議の内容は法定相続情報一覧図には反映されないので、相続放棄した人もその他の相続人と同様に法定相続情報一覧図へ記載する必要があります。

  • 相続人の住所を記載できる

法定相続情報一覧図には被相続人の最後の住所を記載することになっていますが、これに加えて相続人の住所も記載できるようになりました。相続人の住所が記載されていると、相続登記を申請する場合に別途相続人の住民票を提出する必要がなくなるなど、より便利に使用することができますので、手続きが少し楽になります。

法定相続情報一覧図はかなり厳格なルールに沿って作られていて、数次相続の場合には1通でまとめることができないなど複雑な相続では使いにくいケースもありますが、兄弟姉妹を相続する場合や提出先が複数ある場合には便利ですので、ご利用を検討されてみてはいかがでしょうか。

法定相続情報制度を使用できない(しにくい)ケース

  • 相続人に外国籍の方がいる場合

法定相続情報制度を利用するためには、「相続人全員の戸籍」を法務局に提出する必要があります。外国籍の方には戸籍がないため法務局へ提出することができないことから、法定相続情報制度を利用することができません。

  • 数次相続がある場合

法定相続情報一覧図に記載されるのは、相続が開始した時の同順位の相続人のみです。そのため、相続が開始した後(第一相続)、相続人がさらに亡くなった場合(第二相続)のような「数次相続」のケースでは第一相続と第二相続をまとめて一枚に記載してもらうことはできません。このようなケースでは「第一相続」で1枚、「第二相続」でさらに1枚と法定相続情報一覧図を別個発行してもらう必要があります。わかりにくい場面ですが、数次相続が起こったときには法定相続情報制度は少し使いにくいものとご理解ください。

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