依頼者

父が持っている不動産の相続をお願いします。実家の土地と建物です。

代表司法書士 永田

承知しました。ご実家の相続登記ですね。不動産の場所や個数を確認させていただきたいので、固定資産税の納税通知書などを拝見してもよろしいでしょうか?

依頼者

実家なので不動産の個数は土地1つ、建物1つじゃないんですか?

不動産の名義をお亡くなりになった方(被相続人)から相続人に名義変更登記をする場合、被相続人が「どこに」「いくつ」不動産を持っていたのかを調査しなければなりません。

ご実家を相続される場合、被相続人が所有していた不動産は「建物1棟(自宅)・土地1筆(建物が建っている土地)」に見えます。

しかし、法律的には自宅が複数の土地の上に建っていることもよくあります。マンションのように大きな敷地がある場合は特にそのようなことが多いです。また、自宅から出るためには道路を使いますので、その道路についても所有持分を有している場合もよくあります。

複数の土地の上に自宅がある例

住所:千葉県柏市A町1丁目2番3号の場合

自宅の住所が「千葉県柏市A町1丁目2番3号」であったとしても、不動産の正式な表記が「千葉県柏市A町1丁目2番3号」であるとは限りません。不動産の正式な表記が「地番」や「家屋番号」であるのに対し、住所は「住居表示」という別の表記がされていることがあります。

上記の場合、建物は「千葉県柏市A町一丁目999番101」と「千葉県柏市A町一丁目999番102」の土地に跨って建っていますので、被相続人は土地を2筆所有していることになります。片方だけを相続登記してもう片方の相続登記を忘れてまわないように注意が必要です。相続登記をする場合、所有している不動産を漏れなく確認するためにしっかりと調査することが重要です。

記調査方法

  1. 権利証
  2. 共同担保目録(不動産に抵当権が設定されている場合)
  3. 固定資産税納付通知書の明細(毎年4月~5月に役所から送付されます)
  4. 名寄帳
  5. 公図から予想して登記簿を取得

これらの書類で所有している不動産を確認します。

➀権利証

被相続人が持っていた権利書をみることで不動産の所在を確認することができます。

権利証には、不動産の購入や相続した時に法務局へ申請をした不動産の表示が記載されていますので、確実性が高い書類といえます。ただし、「権利証が他の書類に紛れてしまい見当たらない」「引っ越しの際になくしてしまったようだ」など保管場所がわからないため権利証が見当たらない場合などには他の手段で確認をする必要があります。

➁共同担保目録(不動産に抵当権が設定されている場合)

不動産に抵当権が設定されている場合には共同担保目録で確認することができます。

マイホーム購入のため銀行で借り入れをする際にはご自宅を担保として抵当権が設定されますが、抵当権は購入した土地と建物全てに設定されるのが通例です。共同担保目録はその抵当権が設定されている全ての不動産が記載されますので、目録を見ると所有不動産を確認することができます。

ただし、現金で購入をしたような場合には抵当権の設定はされませんので、その場合には別の方法で確認することになります。

③固定資産税納付通知書の明細

毎年役所から送付される固定資産税納付通知書で確認することができます。

固定資産税の金額を決定するためには、どの不動産がいくらなのかがわからないといけません。役所から送られてくる固定資産税納付通知書には「被相続人がいくつ不動産を持っていて、その固定資産評価額がいくらなのか」が一覧表としてまとめられています。

ただし、固定資産税納付通知書は固定資産税の支払いのために作成されているので、役所によっては固定資産税が非課税の不動産については記載が省略されていることがあるので注意が必要です。

④名寄帳

役所で名寄帳を取得し確認することができます。

名寄帳は固定資産税納付通知書の一覧表と似ていますが、こちらには非課税の不動産も記載されています。ほとんどの場合、名寄帳で確認すると所有不動産を漏れなく調査することができます。【例:柏市の名寄帳の取得方法】

しかし、不動産を単独所有ではなく共有している場合、名寄帳に全ての共有者が記載されているとは限らないので、不動産が漏れてしまうことがあります。

また、名寄帳に記載される不動産は市区町村ごとに作成されているため、複数の市区町村で不動産を所有している方については全てを把握することができない場合もあります。(例:①千葉県柏市の自宅と②埼玉県三郷市の実家を所有している場合、柏市の名寄帳には三郷市の実家は記載されていません。その場合、三郷市からも名寄帳を取り寄せる必要があります)

※令和8年4月までに所有不動産記録証明制度(仮称)が開始される予定となっています。この制度により取得できる書類には、従来の名寄帳よりも広範囲の不動産が記載されると想定されているため被相続人が所有している不動産の把握がしやすくなることが期待されています。

⑤公図から予想して登記簿を取得

公図から予想して登記簿を取得すると所有者がわかる可能性があります。

公図とは、法務局に備え付けられている図面で、土地の大まかな位置や形状を表したものです。一般的な地図のように建物や線路などが描いてあるわけではなく、土地に割り振られた地番とその大まかな位置だけが描かれています。この公図を元に、「実家の前には道路の様な形状の土地があるようだから、そこに不動産の共有持分があるかもしれない」と予想して登記簿を取得します。名寄帳に記載されているもの以外の不動産は非常に見つけにくいのですが、稀に名寄帳でも把握されていない不動産を公図上から発見することができることもあります。

これだけの方法を取っても絶対に被相続人が所有する不動産に漏れがないとは言い切れないのですが、当事務所では専門家として手を尽くして調査を行っています。