依頼者

父が最近亡くなったのですが、祖父名義のままになっている自宅を私名義に変更することはできるのでしょうか?

柏市の相続司法書士 永田

➀祖父➁父の順番でお亡くなりになった場合、相続が2回あったものとして手続きをする必要があります。これを「数次相続」といいます。

相続が2回ある分、シンプルな相続に比べると必要な手続きが増えますがご自身に名義を変更することも可能ですよ。

数次相続とは「ある者(第一次被相続人A)が死亡して相続が開始し、その者の遺産分割未了の間に、Aの相続人の1人(第二次被相続人B)が死亡して相続が開始した場合」をいいます。

これだけだと難しいので、下の例をご覧ください。

①祖父Aが亡くなった

➁祖父Aの財産についての遺産分割協議を行わずにそのままにしている間に、父Bも亡くなってしまった

このように、遺産分割が終わっていない間にまた新たな相続が始まってしまうの数次相続です。

不動産を所有している方が亡くなったときには、相続登記をして名義変更をするのですが、相続登記は義務ではありませんので、相続登記をせずにそのまま放置してしまうケースもよくあります。名義が被相続人名義のままでもさほど困らない場合、どうしても先延ばしになってしまいがちですね。(なお、相続登記については令和6年4月から相続登記が義務化されますので相続登記は早めに行う必要があります)

数次相続が生じてしまった場合、シンプルな相続登記に比べると必要となる書類が増えたり、相続人間の合意が難しくなったりする可能性があります。相続手続を進めることが困難になってしまう場面の一つです。

具体的な遺産分割手続の方法

上記の様な場合に祖父Aが所有している自宅の名義を子Cへ相続登記をするための、所有権の移転としては

第一次相続(以下一次といいます):祖父Aが亡くなったことによる相続人は祖母aとその子である父B、b、cの4人です。ここでは、父Bが祖父Aが所有している自宅の所有権を相続するとしましょう。

第二次相続(以下二次といいます):父Bが亡くなったことによる相続人は母dと子C、e、fの4人です。父Bが相続をした祖父Aが所有している自宅の所有権を子Cが相続することができれば、祖父A名義の自宅について相続登記をすることで子Cが名義人となることができますね。

では実際にどのように手続きをする必要があるのでしょうか。

まず、一次で父Bが所有権を相続するためには、祖父Aの相続人全員による遺産分割協議により、父Bが所有権を取得するということの合意をしなければなりません。

ここで問題となるのは、父Bはすでに死亡しているため、全員の合意をすることができるのかという点です。

この点については、父Bが取得した相続人としての権利義務は、父Bの死亡によりその相続人である母dと子C、e、fが承継したものと解することができますので、父Bに代わり母dと子C、e、fが祖父Aの遺産分割協議に参加をすることになります。

そうすると、祖父Aについての遺産分割は祖母a、b、c、と母d、子C、e、fの7人での協議が必要です。

次に、父Bの遺産分割については相続人である母dと子C、e、fの4人で協議をします。母d、子C、e、fは2つの協議に参加するということですね。

このように数次相続となってしまうと、関係者が増えてきますので話し合いはとても大変です。

ほとんどこれまで接点もなかったような人と大事な遺産分割協議をしなければならないこともあります。

また、祖母aがすでに高齢で認知症になってしまっていたり、bがすでに亡くなっていてbの子どもが相続人として関与したり・・・考えただけでも大変ですよね。

数次相続はスムーズに手続きが進まないケースがかなり多いものとお考え下さい。なるべく早めに相続手続をすることをお勧めします。

相続は一次、二次の2回発生していますが、その遺産分割協議は1つの書面でまとめて作成することが可能です。その際には、

・祖父Aだけでなく父Bも亡くなっている

・母d、子C、e、fは父Bの相続についてだけでなく、祖父Aの相続についても遺産分割協議に参加した

ということが書面上明確に分かるようにしておくことが重要ポイントです。