依頼者

亡くなった父親名義の自宅を名義変更したいが、登記簿には抵当権の登記がそのまま残っています。父親は随分前にローンを完済しているはずなのですが、どうすればいいでしょうか?

柏市の相続司法書士 永田

まずはお父様名義の自宅の名義変更をする必要があります。それと併せて抵当権の抹消登記の準備もしましょう。

依頼者

ローンの完済証書が見つからないのですが大丈夫でしょうか?

柏市の相続司法書士 永田

完済証書が見つからない場合は再発行をしてもらえることも多いのでご安心ください。ただし、抵当権者である銀行がすでに破綻している場合など、手続きが難しくなるケースがあります。

抵当権の抹消

相続登記のご依頼をいただいた際、登記簿を確認すると昔に設定された抵当権の登記や条件付賃借権設定仮登記等がそのまま残っていることがあります。抵当権が残ったままでは原則として第三者へ売却ができませんので、可能な限り抵当権登記も抹消することをお勧めします。

【被相続人が完済したことがわかる書類がお手元にある場合

お手元にある書類(完済証書、権利証、委任状)を法務局へ提供することで、抵当権登記の抹消ができます。何十年も前に発行されているものでも大丈夫です。

完済から長期間が経過している場合、書類が発行された当時の銀行の代表取締役(甲)と抵当権抹消登記を申請する時点での代表取締役(乙)が違っていることもあります。抵当権抹消登記を申請する時点では、甲は代表取締役を退任してしまっているので、甲が銀行を代表する代理権限は消滅しています。しかし、そのような場合でも登記申請の代理権は消滅しないとされていますので、書類はそのまま使用することが可能です。

先例では、「登記申請の代理人が当該代表者の代表権限が消滅した旨及び当該代表者が代表権限を有していた時期を明らかにし」て登記をするようにとされている(平5・8・30民三5320)ので、登記の申請書には以下のように代表者の代表権限の消滅事由及び年月日を明示する必要があります。

登記義務者の代表者の代表権限は消滅しているが、代表権限を有していた時期は平成〇年〇月〇日から平成〇年〇月〇日である。

【被相続人が完済したことがわかる書類がお手元にない場合】

被相続人が完済したことは間違いないが、昔の話であったり代替わりしている場合は書類が見つからないことがあります。

書類を紛失してしまっている場合でも抵当権の抹消をする方法は遺されています。

このような場合、抵当権者である銀行に書類の再作成を依頼します。

実際には

  1. 銀行に書類を再発行してもらう
  2. こちら側で書類を作成し、銀行がその書類へ印鑑を押す

のどちらかの方法で準備を進めます。銀行によっては数千円から数万円の手数料がかかる場合もあります。なお書類を紛失した場合、司法書士が関与しないと銀行は書類の再作成に応じないこともあるのでご注意ください。

書類の紛失後、実際に弊所で抵当権を抹消したケース

【弊所で解除証書を作成したもの】

A農業協同組合が抵当権者となる抵当権の抹消登記をご依頼いただきました。

完済書類は紛失してしまっていることをA農業協同組合へ連絡したところ、こちらで解除証書のひな形を作成すれば、作成した書類へA農業協同組合が印鑑を押してくれるということになりました。

弊所で書類を作成しA農業協同組合へ送ったところ印鑑を押してもらうことができ、無事に抹消手続きを進めることができました。

【破綻した銀行が抵当権者となる抵当権の抹消登記】

すでに破綻をしたB銀行が抵当権者となる抵当権の抹消登記をご依頼いただきました。

破綻した銀行の場合、支店も閉鎖されてしまっていますので通常の取扱窓口はありません。調査をしたところ、清算人のうちの一人が抵当権抹消書類再作成の担当をしていることが分かりました。

清算人は、完済書類が紛失してしまっている場合の手続きに慣れている方でしたので、必要な書類をスムーズに再発行してもらい無事に抹消手続きを進めることができました。

【条件付賃借権設定仮登記】

少し変わったケースとして、C公団が条件付賃借権設定仮登記を設定していた土地について抹消登記をご依頼いただきました。

条件付賃借権設定仮登記というのは、実質的な担保の一環として使われていた登記です。

C公団もすでに今はなくなってしまっていたので調査をしたところ、C公団をD公団が引き継いでいることが分かり書類の作成を依頼しました。その書類を使用して無事に抹消手続きを進めることができました。

上記のようにスムーズに手続きが進むことも多いのですが、時にはかなり複雑な法律関係になっていて費用・期間がかかってしまうため依頼者が断念されたケースもあります。これについては調査をしてみないとわからない部分ではあります。

※抵当権者が金融機関や保証会社以外の法人・個人である場合には、抵当権の抹消手続きや書類の再作成には慣れていないことも多いので、対応してもらうのが難しいことがあります。

法人がすでに解散していたり、個人が死亡していることも考えられます。

このような場合には、抵当権抹消手続きを進めるのはかなり困難になりますので専門家にご相談ください。